外務省が医療滞在ビザの運用を開始するなど、国を挙げた訪日医療観光への取り組みが進む中、日本旅行では医療検診ツアーの取扱いが好調に推移している。日本旅行国際旅行事業本部中国営業部長兼訪日医療ツーリズム推進室長の青木志郎氏によると、2010年度は尖閣諸島問題の影響が多少あったものの、総じて好調に推移し、2009年受け入れ実績の49名を大きく上回る250名を受け入れたという。2011年度は350人の受け入れを目標にし、医療検診ツアーの種類の増加や中国以外の市場への取り扱い拡大で、2013年までに2000名に増やす考えだ。
同社は2009年4月から中国人富裕層を対象としたPET(早期がん検出装置)検診ツアーを開始。2010年7月には専門部署として訪日医療ツーリズム推進チームを立ち上げ、情報を集約、蓄積することで、サービスの向上に努めてきた。2011年は引き続き、中国市場に注力する。富裕層向けの説明会の実施など、提携している中国の旅行会社「優翔国旅(ラビオン)」とともにアプローチを続けていく。
また、新たな医療検診ツアーの開発も実施する。現在日本旅行では大阪の聖授会OCATクリニックとの提携でPET検診ツアーを実施しているが、青木氏によると、2011年度の早い時期には新たな病院と提携し、新しい分野の医療ツアーの取り扱いを開始する予定だ。
さらに、今後は中国以外の市場へと取扱いを拡大していく。青木氏は、新たな市場として、中国と類似した環境にあるロシアやアジア地域などをあげた。なかでもロシアは中国と同様、富裕層が海外で質の高い医療を受けることに対し高い興味を持っており、成功事例の中国を参考にアプローチを実施していく考えだ。
▽医療滞在ビザは医療観光の基盤−需要増に期待
青木氏は今年から運用が始まった医療滞在ビザに対し、ビザ発給の身元保証機関としての登録を早急に申請する考えを示した。同氏によると、中国の在外公館ごとにビザ取得の基準が異なる場合もあり、日本での医療治療を希望してもビザが取得できなかった中国人もいたという。青木氏は「医療滞在ビザ(の新設)は大変よいこと。医療観光促進における基礎ができた」とし、需要の増加に期待を示した。